「今だからこそ時事ネタ4コマ誌を」という話

私ももうすぐ53ですし、こーゆーことを年齢的に言ってもそろそろ怒られないトシかなーと思いますんで、書きます。

 

私の30代の頃の持論で、「時事4コマの面白い総合週刊誌は売れる」ってのがありました。

順番でいうと朝日、文春、ポストかな。

朝日はかつて4コマ作家の登用にすごく熱心だった時期が30年以上前にあって、そのラストランナーが時事ネタではない山科けいすけ先生。この連載は今なお続いてますね。

 

山科先生と同時期かその直後に朝日で連載を始められたのが、やくみつるさん。(面識の無い作家さんは慣例に従い「先生」、何度かお会いしたことがある作家さんは距離が近いので「さん」です)

やくさん、あの頃あちこちの総合誌で連載を始められてました。そのうちポストの連載は今も継続中。余談ですが、あの連載が単行本化された際、やくさんから献呈本を頂戴しました。なんで私に、と思われそうですが、あのト書きの人物紹介からネタに入る形式って、今は亡き某4コマ雑誌で私が時事4コマを連載していた頃に定型化した形式で、同じ雑誌で連載されていたやくさんにメジャー誌で採用して頂いたのです。そのご挨拶としての献呈本だと個人的には受け止めております。もう四半世紀昔のことなので書いちゃいましたが、これで今さらどう状況が動くわけでもありませんし、まーいーでしょ。あー余談が長い。

 

話を戻すと、やくさんが各誌で連載しまくっていた時期を境に、総合誌からやくさん以外の新しい時事4コマの描き手が現れなくなっちゃった。別の言い方をすると、出版サイドが人材を募らなくなった。探さなくなったと言ってもいいです。

そのため、立ち枯れ的に人数が減っていった。さらに雑誌に載ってないから、「こういうマンガで自己主張してみたい!」と思う人がいなくなった。スパイラルですね。

 

スポーツ4コマ雑誌を出していた中小出版社がそれを受け継げばよかったんですが、結局どこもやらなかった。ハイリスクだったんでしょうね、たぶん。当時はバブル崩壊後でどこもバブル期みたいに冒険的な企画はやらなくなってましたし、「ハイリスク・ミドルリターンならやらない」と編集者の人から直接聞かされたこともあります。

結果、やくさんが「最後の時事4コマ漫画家」になってしまって、雑誌における時事4コマの時代は終焉してしまったわけです。

 

 

……と、ここまでは全部、インターネットが一般に広まる前の話。


 

時を経て現在、ネットではごくたまに、時事風刺テイストの4コマを見かけます。
が、やっぱしどれも無手勝流というか、コマ運びやコマ構成、ネーム量が「うーん、もう少し整理すればいいのに……」という感じ。自己主張心は伝わるんですけどね。

もっとも、教科書が無いんだから仕方ないのです。30年前のいしいひさいち先生とか高橋春男先生の4コマを見せてあげたいものです。

 

在京時、落語コミック誌と並行して「時事ネタ4コマ雑誌」の企画書を各出版社に持ち込んだこともありましたが、当然反応はありませんでした。出版界の状況はあの頃から悪化の一途ですし、私程度の立場の企画者じゃ歯牙にもかけてもらえないのは、これまた致し方ないところです。

加えて現在は、紙媒体にそこまで固執する理由がありませんから、即時性がナニヨリの時事4コマはむしろネット企画向けかもしれません。

 

 

現代はここまでストレスフルになってしまったのに、かつてマスコミが競って社会風刺を扱った時代のように、笑いを緩衝材にして世の中を穏やかにしようって考える人が少ないのは、世の中の思考がどんどん細い穴に細い穴に入り込んでいってしまうかのようで、とってもイヤです。
「笑えば世の中平和」って落語的で素敵な発想がニッチと呼ばれてしまうほど希少価値になってしまって、逆に世の中を熱く論ずることが最も世の中のためだと大声で主張をする人だらけになってしまった、今の状況はとってもイヤです。

ならば、世の中を笑いのめす時事ギャグ、時事風刺4コマが媒体として注目を浴びれば、ストレスフルでケソついた世の中も多少はユルむと思うのですけど。




私自身がその計画に向けて動くに越したことはありませんが、会社組織も持たない私個人の力ではムリです。そもそも今は生活ができなくてそれどころじゃない(汗)。

なので、もしどなたかこの企画に興味がありましたら、無償で進呈します。どうぞご自由にお持ち帰りくださいまし。

まぁ、昔同様、ハイリスクではあると思いますがね。それを覚悟で、と一言付け加えておきます。

ただ、もし万が一実現化が決定しましたら、ご一報だけでも頂けると幸いです。またその際は、私も何らかの形で末席に一枚噛ませて頂ければ、これに勝る喜びはございません。そんな我田引水オチ。