2024年
3月
08日
金
3月8日、漫画家・鳥山明先生が急逝硬膜下血腫のため1日逝去、との報が流れた。
68歳での急逝はにわかに信じがたく、これを書きながらもボーッとしている。
何から書いたらよいのか判らないので、取っ掛かりとしてこの写真を見せる。
1980年10月のサイン。色紙と単行本で日付が違うのは、書き出すまで自分でも忘れてた。
鳥山先生が愛知県在住なのは知られていたけど、時節柄、正式な町名は公表されてない。ただ、ぶっちゃけ地元の人は全員知っていて、最寄駅からタクシーに乗って「鳥山さんの家まで」と告げれば運んで行ってもらえる程度には名所化していた。ただしそれはひとしきり有名になって豪邸を構えた後の話。このサインは「Dr.スランプ」連載開始の1980年。
「Dr.スランプ」が漫画ファンの間で話題になりだした頃、漫画情報誌の誌上アンケートで鳥山先生、「名古屋の北西の片田舎」的なことを回答されていた。それを読んで、「うちの町だったらスゴいけどなー」とヘラヘラしつつ中学の卒業生名簿を試しに読み返したら、まさかのドンピシャ。小中学校の先輩だった(当時うちの町内に小中は1校ずつしか無かった)。
こうなると矢も楯もたまらなくなり、発売間も無い「Dr.スランプ」1・2巻(同時発売だった)と色紙をかかえて見境なく先生のお宅へ。当時のことなのでご勘弁ください。その日はお留守で、お母様に色紙だけお預けして(ホントご勘弁ください)、翌日再び伺うと、鳥山先生ご本人がお出になられ、なんと仕事場にまで上げて頂いたのでした。いやもうマッタク、不適切にもほどがあってごめんなさい。てゆーか、スゴいのは鳥山先生のこの敷居の低さよ!
この時の鳥山先生の髪型が、則巻千兵衛さんそっくりだったのが、強烈な第一印象。
当時のお仕事場には、出たばかりの単行本カバーの刷り出し(裁断する前の大きなサイズのままの紙)が天井に貼ってあって、仕事机には近々製作されるというノベルティの目覚まし時計のイラスト。今思うと涙ぐみそうな信じられない空間の中で、なんと15分近くお喋りさせて頂けた。まだ今の仕事と全然接点の無かった頃、一漫画ファンとして最大級の感動。
帰りがけ、単行本にもサインして頂けた。色紙と単行本で日付が違うのはこういうわけ。
実はその時の内容、9ヵ月後に大学のサークルの同人誌に残らず書いてて、うーわ我ながらヤベーヤツだこいつと思った。当時の自分のヤバさは置いといて、それ以上に、鳥山先生の対応がホントに素晴らしく、私のよーな者にもフランクに接してくださったことへの感謝は計り知れない。
さらに、私がさくまあきら師匠の門下に入って今の仕事を始めて間も無い頃、さくま師匠のカバン持ちで、鳥山先生の新居にもお伺いさせて頂いている。ただ不思議なもんで、こちらの詳細はほとんど覚えてない。あ、トイレお借りしたことだけ覚えてるな。
「ドラゴンボール」以降は、そんなパーソナルな思い出の入り込む余地も無いほどの世界的作家になられたのは言わずもがな。なので、私の中の鳥山先生の記憶は、ここだけの話「Dr.スランプ」の時代で止まっている。あんまり外で言っちゃダメよ。
そんな中、このCDジャケットのイラストを見つけた時は、めちゃくちゃ嬉しかった。「ああ、まだ町内の中学校の先輩でいてくださってる」って。詳しくは書けないけど、東京を離れる前年、清洲城の近くのお土産売り場で購入したもの。
鳥山先生、まだまだやり残したことがおありだったかもしれませんが、日本の漫画界を世界に知らしめた偉大な存在としての貢献力、またそれと同じくらい、43年半前の夢のようなひと時、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
先生の真似して、拙著「完全『名古屋人』マニュアル」のカバーの刷り出し、自分も保管してます。いつか天井に貼ってやろうと思いつつもうすぐ30年。
2024年
1月
05日
金
5日になっちゃいましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いのほどを。今年のお年賀ビジュアルはこちら。
(辰年はコレでとだいぶ前から決めてました)
2023年
12月
21日
木
昨年末~今年、惜しくも彼岸に発たれた、私の好きな業界の方々を追悼します。
(今年公表された昨年の物故者も含む)
敬称は男女にかかわらず「氏」。寄席関係者は「師」または「先生」。
漫画家は「先生」。アナウンサーは「アナ」です。
今年もネットニュースを中心に情報収集し、Wikipedia等の記事を参考にしました。
~ ~ ~
●柳澤愼一氏(2022年3月24日)
●高見のっぽ氏(2022年9月10日)
●桜多吾作先生(2022年12月12日)
●新山ノリロー先生(2022年12月19日)
●布川郁司氏(2022年12月25日、スタジオぴえろ創業者)
●矢崎泰久氏(2022年12月30日)
~ ~ ~
●高橋幸宏氏(1月11日)
●目黒考二氏(1月19日、「本の雑誌」元編集長)
●向井政生アナ(1月21日)
●門田博光氏(1月24日判明)
●鮎川 誠氏(1月29日)
●貴家堂子氏(2月5日)
●辻村寿三郎氏(2月5日)
●松本零士先生(2月13日)
●飯塚昭三氏(2月15日)
●笑福亭笑瓶師(2月22日)
●千田光男氏(2月25日)
●秋 竜山先生(3月6日)
●菅原初代氏(3月9日、「大食い魔女」)
●陳 建一氏(3月11日)
●団 時朗氏(3月22日)
●坂本龍一氏(3月28日)
●橘家二三蔵師(3月30日)
●藤吉次郎アナ(4月3日)
●畑 正憲氏(4月5日)
●市川左団次氏(4月15日)
●久保田剛史氏(4月18日、インデペンデンスデイ)
●二代目平和ラッパ先生(5月5日)
●いなせ家半七師(5月11日)
●中西 太氏(5月11日)
●毒島章一氏(5月14日)
●春日三球先生(5月17日)
●上岡龍太郎氏(5月19日)
●奥山コーシン(侊伸)氏(5月24日)
●藤浦 敦氏(5月28日)
●杉下 茂氏(6月12日)
●北別府学氏(6月16日)
●永谷浩司氏(6月21日、永谷商事創業者)
●熊谷宗吉氏(6月22日、27代木村庄之助)
●山崎 正アナ(6月25日)
●古今亭八朝師(6月26日)
●九里一平氏(7月1日)
●京山小圓嬢先生(7月6日)
●PANTA氏(7月7日)
●ryuchell氏(7月12日)
●無着成恭氏(7月21日)
●桑原和男氏(8月10日)
●松旭斎すみえ先生(8月12日)
●山本二三氏(8月19日、アニメ美術監督)
●おかゆうた氏(8月22日)
●大島宏彦氏(8月23日)
●美濃部美津子氏(8月26日、古今亭志ん生長女)
●寺沢武一先生(9月8日)
●市川猿翁氏(9月13日)
●土田よしこ先生(9月15日)
●所ゆきよし先生(9月16日)
●ヨネヤマママコ氏(9月20日)
●えざお先生(9月21日、カントリーズ)
●遠山 一氏(9月22日、ダークダックス)
●古今亭志ん橋師(10月8日)
●谷村新司氏(10月8日)
●中 利夫氏(10月10日)
●もんたよしのり氏(10月18日)
●財津一郎氏(10月19日発表)
●ティーチャ氏(10月23日発表、めいどのみやげ)
●犬塚 弘氏(10月27日発表)
●三遊亭左円馬師(10月27日)
●泉 昭二先生(10月29日)
●長岡末弘氏(11月2日、元大関朝潮)
●北浜晴子氏(11月2日)
●天野鎮雄氏(11月5日)
●大橋純子氏(11月9日)
●KAN氏(11月12日)
●大瀬ゆめじ先生(11月26日)
●豊田有恒氏(11月28日)
●山田太一氏(11月29日)
●島崎俊郎氏(12月6日)
●磯村尚徳氏(12月6日)
●橘 左近師(12月12日)
●蓮見清一氏(12月14日、宝島社創業者)
●錣山親方(12月17日、元関脇寺尾)
今年は内外の一線級ミュージシャンの訃報が特に目立った年でした。
本稿は個人的な好みで人選していますが、挙げていないミュージシャンも熱狂的なファンを多く持つ人ばかりで、SNSではファンたちの悲痛な声が連日投稿されました。
一方、大江健三郎氏(3月3日)平岩弓枝氏(6月9日)森村誠一氏(7月24日)伊集院静氏(11月24日)といった文学界の重鎮たちも多く旅立たれています。
あと、一つ触れておかなければならないことが。
上に挙げた物故者中、団体に所属しながら訃報が公開・報道されなかった人が一人います。
Wikipediaの「2023年物故者」の項で見つけ「あれっ?」と思いつつ追加しました。
もしこの一覧を見て「あれっ?」と思った人は、ご自身でWikipediaを確認してみてください。私は全く門外漢ですが、「もしやあれかな?」と思い当たるふしはウッスラあります。所詮邪推ではありますが……と締めようと思ってたら、週刊ポスト1/5号の高田文夫先生のコラムを読んで、バラバラな点と点がつながった思い。まぁ邪推は邪推ですが。
それにしても、寺尾とか、KANさんとか、完全な同級生の訃報を書かなきゃならないのは
やっぱり胸が痛むなぁ…。
来年は、たくさん笑えるよい年になりますように。自分もその言葉を噛みしめつつ。
(12/31追記・29日には「アホの坂田」坂田利夫さんが他界。吉本の名古屋の年末公演では新喜劇に出演されていました。コメディNo.1時代の漫才も記憶に残ってますが、前田五郎さんとの掛け合いは今のオール阪神・巨人さんに近い50:50の力関係で、たまにツッコミ役をすることもありました。ただ後年の「アホキャラ」イメージが強過ぎたため、私より下の世代はそちらでしか捉えていないかもしれません。後半生は漫才から離れた芸人人生でしたが、一度名古屋で、五郎さんの娘の前田まみさんとコントの舞台を演じておられたのを見た時は、内心嬉しかったです。コメワンの漫才、また見たいなぁ…)
2023年
11月
03日
金
今年も「寄席描き展」の季節がやって参りました。日本落画家協会の恒例ギャラリー、回を重ねて第11回目の「寄席描き展」が、11月12日(日)~26日(日)の半月間にわたって江東区の森下文化センターで催されます。20日(月)休館。入場無料。
今年のテーマは「縁 えにし」。落語にまつわる様々な「縁」が、22人の描き手によって表現されます。ちなみに私は、2015年の新生オープン以来ずっとご縁を保ってくださっている、名古屋・大須演芸場を題材にします。東京ではまだ未展示の落画などを出展する予定。
今年は落語会「あさり寄席」はありませんが、コロナ禍明けでイラスト大喜利や似顔絵コーナーなどの企画が再開します。お時間のある方、ぜひ足をお運びくださいませ。
2023年
9月
30日
土
NHK-BSプレミアムの「あまちゃん」再放送全156話が、9月30日に完結した。
待ちかねた再放送だっただけに、開始前一番恐れていたのが「大地震発生による放送自粛、休止」。9月27日の第153話で途中に地震速報のテロップ(しかも東北で)が入って正直ドキッとしたが(大事にならなかったようなので書いてます)、ともあれ……半年間のチェックは長かったー。ぐったり。
好きなモンでも半年継続はホント大変。その分やりがいはあったが。
さて、後編は第18週「おら、地元に帰ろう!?」からラスト第26週「おらたち、熱いよね!」までの9週(第103話~156話)。前編(こちら)・中編(こちら)をひっくるめてなお余りあるほど、ストーリーが激動した9週であった。
ドラマの大筋に関わる展開だけでも「春子の新事務所~アキのブレイク」「夏ばっぱの入院手術」「映画『潮騒のメモリー』オーディション~撮影」「太巻の鈴鹿への告白」「鈴鹿が春子の事務所入り」「東日本大震災~アキ北三陸へ帰る」「流された海女カフェの再建」「北鉄の一部再開通」「潮騒のメモリーズ復活」「鈴鹿のリサイタルツアー」と、こんなにあった。
これに主要登場人物らのエピソードまで加えたら、ただでさえ重層的なドラマなのに、とてもじゃないが追いきれない。
なので、笑いに特化して検証するという本稿のテーマは、我ながら実に小ざかし…いや、効率的だなーとニンマリしてたら、実はこちらにも、重層地獄が待ち構えておった。
前回の中編の記事中「2度目シリーズ」と称していたアレだ。
後編へ入ってから、「2度目シリーズ」つまり「過去回の名シーンや名ゼリフを別場面でリフレインする」式ギャグが顕著に増えた。1話に数ヵ所出る日もあるほど。
前回書いた、長丁場の中で生まれた新たなクドカンのギャグパターンかもしれないし、あえて意図的に計算したシナリオなのかもしれない。
巷間の「伏線回収!」って常套句が好き人は、途中で言い飽きたと思う。それほどあった。
ホントならここで後編の「2度目シリーズ」を列挙したい所だけど、これまたとてもじゃないが追いきれないので、今回泣く泣く割愛した。
本放送から10年経ってイマサラ無いだろうけど、「お仕事」として依頼が来た時用に取っとこう。
もっとも考えたら、そもそも最終話のセレモニーのシーンからして第1話のリフレインだし、
アキとユイのお座敷列車も第53話のリフレイン。『潮騒のメモリー』は映画も歌もリバイバル。
言うなれば「あまちゃん」というドラマ自体が、「2度目(≒元に還ること)」をベースに描かれ続けた。そこにはもちろん、東北の「被災からの復興」という願いも込められている……ような気がしないでもない。なのではないか、やぶさかではない。そんな夢を見た。
たまたま「見つけてこわそう!」の「逆回転」というワードがキャッチーで、ドラマ内でもよく使われたものの、それを引き合いに出すまでもなく、最初からそのセンを狙った上での重層ギャグ連射だったのか…?などと、全話見終えて思ったのだけど。こりゃ穿ち過ぎかな。
いかん、笑いに触れる前に、つい総括っぽいことを始めてしまった。
総括はこのあと改めてするとして、ここからはいつものペース。
私が「あまちゃん」第103話~156話で大いに笑ったシーン10選(順不同)。
★あれが?幸橋夫?(116話)
第20週「おらのばっぱ、恋の珍道中」のエピソードが個人的にとても好きで、中でも夏ばっぱ一行が橋幸夫に逢う場面の、表題セリフの「間」の良さ。きっと何度見ても笑えると思う。
ちなみに、鈴鹿ひろ美が「幸橋夫」と前後を間違えるギャグは、154話に「北鉄のミスユイちゃん」という形で再登場します(2度目シリーズチラ見せ)。
★圧倒的な前髪クネ男(128話)
放送当日はSNSのトレンドワードにほぼ終日名前が載っていたほど、再放送なのに超人気。
久々に見たけど、ここまで動きも口調もコントチックだったのは覚えてなかった。たった1回の出演でここまで爪痕を残せる勝地涼さんすごい。
ということで、その前髪クネ男もいる、10年前に描いた絵(チョイ役大集合)を本稿ラストに載っけます。
★甲斐さん熱いよね(一連)
純喫茶「アイドル」の甲斐さんは好きなキャラクターだった。出シロとしてはチョイ役なのに、後編の行動はどれも記憶に残った。
「見つけてこわそう」の逆回転に「えぇぇー!」と真顔で驚いたり(112話)、鈴鹿ひろ美の結婚にショックで寝込んじゃったり(141話)。とりわけ、正宗の婚姻届の配偶者欄に自分の名前を書きかけた場面(144話)は爆笑した。
★アキの一人芝居(123・124話)
オーディション後、種市先輩を家に誘う「さかりのついた猫背のメスの猿」アキ。
「ママもパパも、家さいねぇの」と自分の言葉を繰り返し、続けて「5分待でるか?」と先輩の言葉も復唱し、さらに「ママもパパも、家さいねぇの」を繰り返したあと、アキのナレーションで「というわけで、『あまちゃん』スタート!」。
ちなみに、「さかりのついた~」のフレーズは、66話でアキをなじる春子のセリフ「あんたみたいな、猫背の貧弱なメスの猿」が元ネタ(チラ見せ)。
★違法動画(119話)
「今は恋人がお仕事です」と言い間違えたアキの声を、相撲中継の高見盛のインタビューにかぶせた動画。クドカン得意のキワキワ狙いの笑い。
★「踊りだしましたね」「バカなのか?」(151話)
この時の太巻の踊りが実にバカっぽかった。
★泣く子供たち(146・152話)
GМTに対して、眼鏡会計ババアに無理やり頭を押さえつけられて泣きそうな琴ちゃんの顔に、つい笑ってしもた。ギャグはひでーけど、あくまで「あるあるの笑い」です。
もひとつ、栗原さんの愛児に「死霊の『だんご3兄弟』」を聞かせる鈴鹿ひろ美。この時の赤ちゃんの泣き顔(別撮りインサート)にも笑ってしもた。
『だんご3兄弟』って音階がずっとマイナー音で続くので、アカペラだと普通でも怖いんです。余談。
★「やれよ!」「やるよ!」「やった!」(146話)
前編の時に書いた「シチュエーションに則ったセリフの笑い」の一例。
潮騒のメモリーズ活動の再開を「やりたいよ、でもやれないよ…」と迷うユイに、その場の全員で「やればいいのに」などとけしかけ、最後に兄のヒロシが強く促すと、ユイもはずみで「やるよ!」。間髪入れずに勉さんが「やった!」と韻を踏んだ歓声。
この一連、ユイの心の逡巡を見事に描写した名シーンだった。
★いっそんのインパクト(134話)
前日(133話)が震災の回。ドラマ全体に重い緊張が続く中、アキが北三陸の人たちの笑顔を順番に思い出す場面は、ホッとした。
いっそんのキャラクターの濃さが全編を通じて最も役に立った名シーン。
★6人の中年による合同結婚披露宴(154話)
「バージンロードを歩く6人の中年。みんな何となく半笑いでした」
というアキのナレーションが、笑えた中にも不思議と沁みた。
後編は、笑えるシーンと連動した名場面も多かった。
・メールの変顔画像→「アキちゃん逆回転してよ」(117・118話)
・鈴鹿ひろ美の宇宙ドラマ、光に消える鈴鹿さん(136話)
・北鉄の車体にあるプロポーズの言葉に大吉「だぁ!じぇじぇじぇー!」(152話)
・若春子の持つマイクの電池が抜けて、太巻の額に命中(153話)
それと並行して、
・「何この空気?最終回?」(136話)
・春子のスケバンエピソードに、ナレーションの春子がツッコむ(151話)
などの「降りたギャグ」(コント番組の楽屋オチっぽい笑い)も目立った。
ドラマが終盤に来れば来るほど、ギャグが全方向から容赦なく攻めてきた感。
あとそうですね、前・中編のアンサーを落穂拾い的にいくつか…
・149話で北三陸にさかなクンが来た際、ユイが「どこ?人面魚どこ?」と飛び出して来たのは、44話にあった未確認生物論争シーンのアンサー。みんながサンタだ河童だ言ってる最中、ユイだけは「私何にも見たことない…」と落ち込んでたのを覚えている視聴者へのサービスゼリフ(チラ見せ)。
・63話であらすじが紹介された映画『潮騒のメモリー』は、太巻が脚本を手掛けた『潮騒のメモリー ~母娘の島』で内容一新。
127話で紹介されたストーリーによれば、二人に襲いかかる不幸として
「夫の残した借金、村人の噂話、執拗な嫌がらせ、60年に一度の巨大台風、120年に一度の大飢饉、4年に一度の盆踊り、鈴鹿山の大噴火、突然現れるイカ釣り船の漁師トシヤ、そして母・ひろ美の体を蝕む流行り病」
と起伏を大幅追加された(ヘビを飛び越えるシーンはカット)。
・前・中編で頻出した「アキの振り返り」は、124話(種市先輩とキスする寸前、社長デスクの若春子の視線に気づく)が最後。
振り返りはそれっきり、もう見えなくなりました。
(10/1追記・と思ったら、152話にありましたね。特に際立たせる演出は無かったですが
天野家で大吉の結婚への決心を問いただす場面でやってました)
・あれ、今回水口や「無頼鮨」の梅さんに全然触れてない。
GМTと『地元に帰ろう』にもほぼ触れてない。
でも脱退した宮下アユミが、アキの東京最後の宴席に赤ちゃん連れで来て、セリフも無くみんなを遠巻きに見てたシーンだけは、ちょっと書き残しておきたい。
「あまちゃん」はこれまでのNHK朝ドラには無かった、あらゆる側面から多彩な笑いを提供してみせたドラマであった。
脚本から、演出から、ワードから、時に劇伴やアニメーションから、もちろん俳優の演技から。
笑いの好みは百人百様なので全員が全てを気に入ったかは分かりかねるが、その手数の多さが朝ドラ古今唯一無二だったのだけは間違いないだろう。
種類も、共感のあるある笑いからSF的荒唐無稽ギャグまで振り幅自在。
そしてそれらの笑いが時に潤滑油になり、時に大きな感動の流れを呼び込んだりした。
でも最終的には、同じ「おもしろかった!」という感想でも、「あー笑った!」って意味ではなく「感動した!感激した!」って意味で「おもしろかった!」と喜んだ視聴者の方が多いんだろうなぁ。
書きながら「さてどんなシメにしようか…」と迷っているのがバレバレですが、個人的に一番特筆したかった「あまちゃん」の凄味は、この2点。
「印象的なギャグをすべてリフレインして使ってみせる脚本の計算能力」
「震災のわずか1年半前後で、震災時期の核心に触れつつ、被災者心理の機微までドラマ化する、脚本の時事に対するフットワーク」
結局、「クドカンすげーや!」ってことなのね。おしまい。