「あまちゃん」の中の笑いメモ(前編)

この4月3日からNHK-BSプレミアムで、待望の「あまちやん」再放送がスタートした。

初回放送の2013年当時もハマってたびたび旧ブログに記事を書いてて、その要約記事が残ってたので興味ある方はどーぞ(こちら)。その後、宮藤官九郎さん脚本のドラマの記事は「いだてん」と「タイガー&ドラゴン」を書いたけど、今回は改めて「あまちゃん」について自分なりの切り口でその面白さを紐解いてみたい。

こーゆー感想文もどきは、初回放送の時は途中から見始めた横入り組だったため遠慮してたのです。今回は胸張ってできます。ってすごいイマサラだけど。

 

もっとも、これを書いているのが第9週(第54話)終了時で、まだ3分の1(本放送時は次の第10週から見始めた)。

先が長いので、3分の1ずつ前中後編の3回に分けるつもり。今回は最初ってことで、わかりやすく「あまちゃん」の中の笑いの類型分けなどをごく簡単に。

なお、ストーリーや人物設定などドラマの基本情報は省略します。ご了承あれ。

 

 

さて、「あまちゃん」の中で見られる、見出し化しやすい笑いの種類は、次の7点。

 

(1)あるあるの笑い

1980~84年に青春期を過ごした人が思わず自分と照合して「死ねばいいのに」とつぶやいてしまいたくなる、甘ずっぱい記憶の数々。当時のアイドルや歌謡曲も、これでもかというくらい出てくる。歌は過去の記憶想起の潤滑油になる。

 

(2)キャラクターの笑い

はっきりコメディ担当として出演している人(弥生さん・あんべちゃん・磯野先生)から、わかりにくいけど実はコメディ演技もしている人(ほぼ全員)まで。さらにナレーション(宮本信子さん=夏ばっぱ)が笑わせに来ることも。

実は「あまちゃん」における唯一無二にして最大最強のキャラクター面での特徴は「全員のバランス」なのだけど、それは次回以降に改めて。

 

(3)言葉間違いの笑い

「影武者」と「落ち武者」、「一蓮托生」と「一蓮たくお」、「プロジェクトX」と「プロジェクトA」など、本筋のストーリーに絡むものも含めて結構ある。とりあえず1ターンの会話でひと笑い取れるのでコスパはよい。ちょっとヒネったネタでは、「ね、うし……」「トラウマ?」とか、「JJガールズ」のJポーズが「し」になってた、とか。斉藤由貴の『卒業』の歌詞間違い合戦なんてのもあった。

 

(4)パロディ(見立て)の笑い

アキが自転車で宙に浮いたあとドボンと落ちる「E.T.」を始め、ヒロシです、ジェームス・ブラウン、映画『潮騒』、お座敷列車の車体に描かれたネズミ、などなど。

花巻さんという例えツッコミ係が参加しだしてからは一層明確に晒されるようになった。「わかる奴だけわかればいい」という基本姿勢が潔い。

 

(5)シチュエーションに則ったセリフの笑い

感動的なシーンが「うまいなぁー」と思うのと同列で、積み重ねたセリフから生まれる笑いにも「うまいなぁー」と思うことがたびたびあったが、こちらは長くなるので後日。

 

(6)演出と劇伴の笑い

NHKのコント番組「サラリーマンNEO」「となりのシムラ」の吉田照幸ディレクターの参加により、コントチックな笑える演出も時おり見られたのは、朝ドラ的には特筆事項の一つ。その後、同様の演出の真似をしてうまくいっていない朝ドラをいくつか見た気がする。

これは先程の(4)に属するが、「ソウルトレイン」を模した劇伴を最初に聞いた時は笑った。

 

(7)顔の笑い

今回この記事を書くにあたり、ここまでの54話を全部見返して「どこで笑ったか」を確認したのだけど、自分でもビックリするほど単なる顔芸で笑っているシーンが多かった。特にアキは顔芸の宝庫。もっともアキの場合は、笑わせる顔だけでなく様々な印象深い表情があり、「この顔は全話通してこの瞬間だけでしか見なかったなー」という顔がいくつもあったと記憶する。白目だけではないのだ。

 

 

で、以上をふまえまして……

私が「あまちゃん」第1話~54話で大いに笑ったシーン10選(順不同)。

 

★アキの振り返り(一連)

…アキが表情と瞬発力で見せる名場面。数えたら5回あった。17話(聞こえないふり作戦)、27話(怖い夢)、30話(夏ばっぱの不倫?を暴く相談)、40話(春子の様子を窺いつつユイと種市先輩の話)、43話(模試3点)。特に3点の時の振り返りは何度見ても笑える。

 

★「じぇじぇじぇ」でしか話せなくなるアキ(31話)

…死んだと思っていた祖父・忠兵衛さんの姿を見たショックで、うわごとのように「じぇじぇじぇ、じぇじぇじぇ」と言うアキ。ギャグとしては不条理に近い。

 

★アキの泣き顔記念写真(47話)

…面白いので絵にしてみました(いちばん下)。実際は仁王立ちとグラビア風の2ショット。

 

★アキの夢(一連)

…「男はつらいよ」的な古典的笑いではあるけど、内容はシュール。ナレーションで「もうばらしちゃうけどこれは夢です」とか先につけちゃうギャグも。

 

★サーロインステーキ(16話)

…ステーキの大きさが予想を超えてて、見てて大笑いしてしまった。

 

★理不尽なキレ方をする母の記憶(22話)

…「かつてあんなキレ方をしたことがあっただろうか?…結構あった」。

 

★あんべちゃんの中学時代の写真(22話)

…あんべちゃん、うける!

 

★「変態!」「すいません!」(10話)

…監視小屋のヒロシでいうと、アキが海に飛び込んだのを見て、なぜか一旦雑誌に目をやり、ハッと我に返って非常サイレンを鳴らすシーン(5話)もよかった。

 

★「ヒロシです…」(13話)

…初期の北三陸編ではヒロシはメインキャラの一人だったなぁ。

 

★未確認生物論争(44話)

…「サンタはいる」と言い張るアキに、吉田が「カッパ見たことあんのかよ!」と口論をふっかける場面。そのあと天狗、UFO、ツチノコ、海坊主、心霊写真、金縛りと、その場の全員を巻き込んで脱線してゆく舞台のようなワンシーン。

 

次点・磯野先生(一連)

独特の風貌と声質で我が道を行くいっそん。一人だけお芝居が違うけど、「あまちゃん」における「南部ダイバー」の歌の異質さにも似ていて、これぐらい飛んでる方が相対的にいいのかも。

 

 

今回はここまで。分解だけして続きは次回8月に書きます。あー長っ。