約2ヵ月ぶり、NHK-BSプレミアムで現在絶賛再放送中の「あまちゃん」イマサラ検証。
前回記事はこちら。2013年の初回放送時のリアクションはこちら。
前回同様、ドラマの人物設定など基本情報は省略。
前編では、第1話~54話までの9週が対象だった。ストーリー的には、海女カフェが動き出し、水口の正体がバレかかる頃まで。
今回の中編は、第10週「おら、スカウトされる!?」から第17週「おら、悲しみがとまらねぇ」までの8週(第55話~102話)。内容的には、アキの東京での本格的芸能活動がスタートする端緒から、クビを宣告されたアキを助けに春子が東京に乗り込むまで。
ドラマ内の暦の上では、2009年4月頃から2010年5月前後らへん。この1年でドラマの内容は劇的に変貌し、ストーリーもいよいよ核心に突入した感が強い。
今回はまず、この8週で私が大いに笑ったシーン10選から(順不同)。
★アキと若春子と静御前の夢(101話)
…アキが太巻からクビを宣告された夜。「眠れません」と水口の部屋を訪れたアキが寮の台所に向かうと、部屋に第1回の冒頭シーンと同じ格好をした若き日の春子がいる。自分のせいでデビューできないことを詫びたりした後、突然「潮騒のメモリー」を歌うと言い出した所で、静御前の格好をした鈴鹿ひろ美が現れる。鈴鹿が「私の『潮騒のメモリー』!」とマイクを奪おうとするも、春子は忍者のようにかわし、「天野さ~ん」と助けを求める鈴鹿を尻目に「ははははは」と高笑いしつつ寮内をチョコチョコ走り回る。間に入ったアキが「2人ともやめて!」と叫んだところで、夢が覚める。
このシーン、初回放送(2013年)の時から大好きで、今回もイラストで描きたかったけど、時間が無く断念。代わりに文章でしっかり再現してみた。
過去のハイライトを「夢」という設定を使って見せてくれた、ばかみてーだけど一視聴者としてはとても嬉しいシーン。
★アイドルにおばあちゃんいたらおかしいでしょ(84話)
…GMTの中で遠藤真奈(福岡→佐賀)は目立たない側の存在なのだけど、回を追うごとにいい感じのコミカルさが出てきた。登場人物全員の個性が濃い「あまちゃん」だからこの位置なのであって、笑いの少ない他の朝ドラならすぐさま注目を浴びる程度にはおもしろい。
とりわけ、GMTの衣装チェックのシーンは、繰り返し見るとしみじみおかしい。真奈の「佐賀のがばいばあちゃん」スタイルを見た水口が、「おかしいでしょ!アイドルだつってんのに、おばあちゃんいたらおかしいでしょ!」と怒る。このアイドルグループにおばあちゃんを入れるという発想、普通は出ない。
なのに真奈は、その後も、腰を曲げて歩く振り付けをしたり、杖を小道具に持ったりして、頑としておばあちゃんを貫き通したのである。がばい!がばいよ!
そのがばいヘンさをカタチに残したく、絵にしてみました(一番下)。
ベスト2をたっぷり書きすぎた。以下は若干軽めに。
★いらないバイク、買い取るゾウ(88話)
…ドラマにエキストラとして初収録に臨むも、NG40回出して気落ちするアキ。そのドラマのオンエア中に流れた、インド舞踊風のローカルCM。
クレジットに名前が無いけど、メインの男性は内山麿我さんというダンサーとのこと。
★勉さんが1人、勉さんが2人…(74話)
…寝付けないアキが、羊でなくウニを数えて眠る初期定番シーンの発展型。こんな1ギャグに、多忙なはずのスタッフが映像合成の手間を惜しまないのが素晴らしい。
「ファイナル勉さん」(63話)とか、「スマート勉」(64話)とか、中編の勉さんはどんどんおもちゃ化していった。
★しょうが湯(95話)
…過去の出来事を書いた春子の手紙を読んで「あっ!」と叫んだアキの声に、横で「えっ?」と驚いた河島マネジャーが、うっかり自販機の「しょうが湯」を押してしまうシーン。
初回放送当時は流行ってましたね。今見ないけど。
★ママの顔真似?(63話)
…猪木ばりにいかつい表情で「返事はー?聞こえない!」と春子の物真似するアキに、「やっぱり恫喝に反発心はあったんだ」と慮ったワンシーン。
シリアスになる以前の、顔芸で笑えた北三陸時代のラストかな。
★春子の手紙「以上。」(76話)
…「おらのママに歴史あり」の1本目の方。あのキレのよさ!
★たどたどしい映画解説(63話)
…映画『潮騒のメモリー』をどこまでドラマ内で具現化するかにあたり、こういう手段があったか!とちょっと驚いたエピソードでもある。
吉田副駅長の演技+パラパラアニメの合わせ技一本。
★鈴鹿ひろ美の作品群(一連)
…映画『潮騒のメモリー』より、『猫に育てられた犬』という企画の「らしさ」に爆笑。
シングルリリース3枚、ドラマは静御前と『おめでた弁護士』。
★そしてやっぱり、アキの振り返り(一連)
…前編から引き続き、アキの振り返りは各場面で効果的に用いられた。
63話の顔真似の直後や、101話の夢の中でもやっていたし、同じ63話の「ファイナル勉さん?」の時もあった。
他に、76話(あんべちゃんとの再会)、98話(鈴鹿さんのスタジオ番宣)、そして何といっても102話(無頼鮨に春子来る)では「ブンッ」と効果音まで入った。
次点・「自己紹介に次ぐ自己紹介」(第10週予告/74話ナレーション)
「○○に次ぐ○○」はその後ファンの間でフレーズとして残った。名文句。
中編の8週(とりわけ舞台が東京・上野に移った73話以降)は、ストーリーの核心に触れるシリアスな展開が続いたせいで、北三陸時代に中心だったシチュエーションに則ったコメディドラマ的笑いが大幅に減った。代わりに、上で挙げた笑いの仕掛けのそれぞれが一撃必殺的なキレを持ち、インパクトを強めたように思う。
おかげで北三陸編では唯一センシティブなギャグを実践していた花巻さんが、他に圧倒されて上記10選から漏れてしまった。
「海女~ソニック」の命名もフレディもジョージ・クルーニーも、おら忘れてねーよ。
加えて、回を重ねたことで蓄積された「振り返り」「眠れません」「水吹き」「モノクロ」などの繰り返しや、過去の名シーンのやりとりを別の場面でリフレインする「2度目シリーズ」(と私が勝手に名付けている)の手法が頻出しだしたのも、中編の特徴かと思う。
シーン映像のリフレインとは違う形で、我々視聴者の脳を揺さぶり、もてあそび、楽しませてくれる「あまちゃん」の演出。全156話という長丁場の中で生まれた新手のクドカン式ギャグパターンといえる。
んー、ここまでで予想外の長文になり、読んでる人はほぼいなくなったはず。
このあと、前編でひっぱった検証の一つ、キャラクター論に触れる予定だったけど、どうしようかな。しゃーねー、取り急ぎTwitter並みにかいつまんで解説することにする。
「あまちゃん」の比類ない最大の特徴は、実は「キャラクターのバランス」で、あれだけ登場人物がたくさんいて、主要人物の中に印象やシルエットの類似がまったく無い。これはドラマ的には珍しいことなのだ。(つまり、言ってしまえば、類似キャラクターがごろごろいて混乱するドラマもあるということ)
それが北三陸編だけでなく、東京に来てからも、さらにGMTにもいない。唯一、宮下アユミ(徳島)と遠藤真奈の背丈が近かったくらいだが、アユミは早々にGMTを脱退した。計算済みだったのだろう。
かように、主要キャラが増え続けてもなおバランスを保ち続ける、その意味で「あまちゃん」は驚くべきドラマなのである。
以上。
いや、これじゃ肝心な部分が伝わらないので、ちょっとだけ補足。
キャラクターが確立したドラマは、ストーリーが視聴者に伝わりやすい。同時に、人間性が記憶しやすいという利点もある。
脚本のキモが「笑い」と「葛藤」であるクドカン脚本にとって、これはとても重要なことで、留守電リレー(93話)のようなシリアスにギャグをまじえて感動させるという緩急自在な名シーンも、キャラクターの浸透度があればこそなのである。
と、こんなとこでよろしいかしら。
もうちょっと大向こうを唸らせる分析も書きたかったけどね。それはもうひとえに不徳の致す所。勉強し直して参ります。
次回後編はまた2ヵ月後、総括も兼ねようかな。あああーーー長っ。